Lafcadio Hearn & Setsu Koizumi  田淵久美子著

2022/09/12

「ヘルンとセッ」小泉八雲と小泉節 を一気に読んでしまった。私は以前から、ラフカディオ・ハーン〈ヘルン)の書物を読んでいた。池野誠氏の松江の小泉八雲を読んでいたし、寺井敏夫氏の「小説小泉セッ」も読んでいた。実は、この二人は、山陰文芸協会の会長さんなのである。私も山陰文芸協会の会員の端くれでもありますのでね。興味があったのです。

二人とも男性のタッチですので、田淵久美子さんの、タッチはどうかなと、気にはしていましたが、この田淵久美子さんの、「篤姫」「江~姫たちの戦国」もNHK大河ドラマで放映されましたね。とても、読みやすくて、タッチを気に入っていましたので、発売と同時に求めて、読んだところです。今回も、とても、読みやすくて、とうとう、一日で読んでしまいました。

特に、明治23年(1890年)に、ニューヨークから来た作家ラフカディオ・ハーンが、松江の尋常中学校の英語の先生となり、やって来た。その頃の日本は、江戸幕府が倒れ、明治の世となって、セッが生まれた慶応四年は激動の年であった。その年の10月には、明治と改元された。その年にセッは、生まれたのです。まさに明治と言う時代と共に生きることとなったのです。

版籍奉還、廃藩置県で、松江県となり、明治新政府が武士に給金を払う義務はなくなり、家禄の6年分を一括して渡し、士族の就業を促した。セッの家も一括した国からの得た金を、悪質な詐欺により、そのすべてをだまし取られてしまった。没落の始まりだった。そのセッさんは、松江藩9代目藩主・松平斉貴の筆頭家老・塩見増右衛門の孫だったのだ。そのお墓は、東京の赤坂にあると言う。セッは、養女に貰われた稲垣家と、生まれた小泉家の家族の借金の為に、決死の覚悟で、ハーンの女中として、使えることで、その給金で、稲垣家と小泉家を救うことになった。しかし、明治の世では、西洋人のお世話をすることは、異人の妾(めかけ)・洋妾(ラシャメン)と言われ、蔑まれた。あの頃は、暗黙の了解だった。あの当時は、随分と武士の娘が落ちぶれた。異人の妾になったと揶揄された。

しかし、ハーンと、セッは、そんな妾などではなく、ハーンが、帰化人となり、小泉八雲と名乗り、セッとは、正式に結婚した。それにしても、ハーンは、日本の「古事記」に関心を持っていた。高天原(天上界)に天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)をはじめとする神々がうまれ、やがて夫婦の神、イザナキとイザナミがうまれた。二人は国造りに励み、大屋島国(おおやしまのくに)=日本の古称が出来上がった。

ハーンは、「ギリシャ神話にもよく似た話がある」と知っていた。イザナキは顔を洗った時に左目からは天照大神が、右目からは月読命(つくよみのみこと)が、鼻からは須佐之男命が生まれた。

ハーンは、「この須佐之男命の子どもが、大国主命(おおくにのぬしのみこと)だよ。そして、大国主命こそが出雲大社が祀る神なんだよ」と、説明した。その時の西田千太郎(松江尋常中学校の教頭で、(江戸幕府では、松江藩の足軽の身分だった。)ハーンからの質問で、西田教頭は答えた。「祈る時に、なぜ頭を二度下げるのか?」のハーンの質問に、「はい、二礼は、大津神(おおつかみ)と国津神(くにつかみ)へのご挨拶ですと」すると、ハーンは、「天の神と、地の神、つまり天照大神と、大国主命ですね!」と。「はい。伊勢神宮で天照大神を、出雲では大国主命をお祀りしています。ハーンは、ではなぜ、手を四回たたくのですか?」

しかし、西田教頭は答えます。朱雀(すじゃく)・白虎(びゃっこ)・玄武(げんむ)・青龍(せいりゅう)と、四つの方位に神様がおわし、それにつながるとも言います。他にも説があり、神道では、人には四つの魂「四魂」があると言われる。

和魂(にぎみたま)・幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)・荒魂(あらみたま)である。大国主命にもこの四魂があり、これとつながるという意味での四拍手であると、説明された。私は、この「ヘルンとセッ」の本を読むことにより、日本の強みを知ることとなった。明治の世の中で、日本人に帰化人となられた。そして、平成の時代に日本に帰化された、ドナルド・キーン先生だった。日本人よ「誇りを持てよ !!」と、またまた、教えてもらったようだ。